菟田野に薬猟す(推古天皇)


十九年の夏の五月に、菟田野に薬猟す。鶏鳴時を取りて、藤原池野上に集ふ。
十九年五月五日、薬猟於菟田野。取鶏鳴時、集藤原池上。
会明を以て乃も往く。粟田細目臣を前の部領とす。額田部比羅夫を後ろの部領とす。是の日に、諸臣の服の色、皆冠の色に随ふ。各ウズ着せり。即ち大徳・小徳は並びに金を用ゐる。大仁・小仁は豹の尾を用ゐる。大禮より以下は鳥の尾を用ゐる。  

薬猟は鹿の若角(袋角)をとる猟。鹿茸(ロクジョウ)といい、かげ乾しにして補精強壮在にした。後世変じて薬草を取ることになる。

日本書紀 巻第二十二 豊御食炊屋姫天皇  岩波書店