スクナビコナノ神=小名毘古那神

大国主命(オホナムヂノカミ)に協力して国つくりをした、と伝えられるスクナビコナノ神は小人神であった。カムムスヒノ神の手の指の間から漏れた神、と伝えられていることによっても、小人神と考えられていたことがわかる。『伯耆風土記』や日本書紀には、スクナビコナノ神が粟を蒔き、粟が実ったとき粟茎(アワガラ)にはじかれて常世国に渡った、という伝説を伝えている。

海のかなたからより来たり、海のかなたの常世国に去る神であることは、海彼の異郷ニライカナイから豊穣をもたらすとされる、沖縄の穀霊信仰と相通じるものが有る。この神の正体を明らかにしたのが、蝦蟇や案山子であったというのも、スクナビコナノ神が、生産や農耕に関係の深い神であることを示唆している。案山子も、古くは田の神の依り代として立てられたもので、田の守り神であった。スクナビコナノ神の協力した、オホナムノジ神の国造りは、農耕や土地開墾に関するものであったと考えてよいであろう。オホナムジ・スクナビコナ二神の農耕生活に関する興味深い説話は、『播磨風土記』にも記されている。

古事記・講談社学術文庫・次田真幸